茨城におけるものづくり企業経営史(14)

10.現場のものづくり力を重視した経営

質問者:続いて生産技術に関する質問ですが,生産技術には人員をどれくらい配置されていますか。

高橋:現在,課長も含めて7名です。

質問者:その生産技術に,後継者である息子さんを配置されたとのことですが,それはたまたまですか。それとも何か意図があってのことでしょうか。

高橋:我社はものづくりの会社であり,利益の源泉は現場です。不況が来て本当に困った時には,現場のことがよく理解できている人間でないと切り抜けられないというのが,私の経験に基づいた持論です。例えば文系の人が社長になったとします。それ自体は悪くはないのですが,その時には必ずものづくりの現場が本当によくわかっている人物を片腕として持っていないと駄目だと思います。経営が順調にいっている時には何の問題もありませんが,いったん未曾有の不況に入った時に現場をどうしていいかわからなくなることが怖いのです。例えば圧倒的な収入があって,逆に圧倒的に少ない支出の会社なら誰でも経営できるでしょう。成長とともにだんだん企業規模が拡大し,人材をいっぱい集めることができるのならば問題はないかもしれませんが,我社のような企業規模ならばトップになる人間は実際のものづくりがよくわかっていた方がいいというのが私の考えです。

高橋:なお同業者の中では,私みたいな考え方はどちらかというと少数派です。多くの人たちは,お客さんとの人脈を作るために,息子が大学を卒業したらすぐ取引先に入れる。何年間か入れて,向こうで人脈を作って,それで30歳くらいになったら自分の会社に戻すというのが一般的です。私の場合は,特定の会社の色に染まりたくないというのもあるのだと思います。

質問者:できるかぎり自立していたいということですか。

高橋:そうです。

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