茨城におけるものづくり企業経営史(15)

11.中堅企業への取り組み

質問者:さらに高橋社長が経営目標とされている「中堅企業を目指す」という点を,もう少し説明していただけないでしょうか。

高橋:なんとか自分が現役の社長の間に,売上げ規模で100億円の企業になりたいと思っています。ある人が本で指摘していることと自分が実体験したことを合わせて考えた時に,結局,年商が1020億円というのは,社長が1人で頑張ることで実現できます。それから経営環境が良くて,運が良ければ1人で30億くらいに到達できると思います。ただし,これは経営環境が良くて,運が良ければの話です。これに対して,不景気の時でも,景気が良い時でも,コンスタントに成長し続けられる企業体というのは,30億や50億規模では無理です。売上げ50億円という場合も,運が良ければ実現できることがあります。しかし市場の変化にいつでも対応できる企業体質が構築できないと,一時期は良いけれどもある時突然駄目になってしまいます。こういう企業がいっぱいあります。

質問者:逆にその規模を超えた中堅企業クラスになると経営に安定感が出てくるというわけですか。

高橋:そうです。そのためには組織と仕組みをきちんと作るということです。これはある人の受け売りですが,会社の成長を促すのは営業で,営業がビジネスチャンスを取り込みますが、実際に利益を生み出すのは製造です。さらに将来の飯の種を作るのは技術課や生産技術課です。これらをきちんと組織化して確実に成長できる仕組みを作っていかないと,将来,私が経営を退く際に駄目だと思うのです。私の目標というのは,社長が私でなくても誰がやっても安定した経営が維持できる企業にするということです。私見では,売上げが100億円をクリアできると,運とか偶然とかではなく自立的な組織体になりうると考えています。我社は,現在,100億円を達成できる間接部門を用意しているところです。

質問者:それでは単に夢を語っているわけではなく,着々とその目標に向かって取り組んでいるということですか。

高橋:そうです。とは言っても実際に実現しようとするとそれは大変です。リーマンショック時の変動に続き去年(2012年)の後半からは中国の受注が落ちつつあります。中国の勢いにブレーキがかかったのは一昨年(2011年)の5月です。我社は上海にいち早く進出したので,そういう情報を直接自分たちで集めて経営の判断材料にしていますが,そういう激変があるなかで100億円の売上げを達成しようとするのは大変なことです。大変ですがなんとか達成したい目標です。

質問者:御社が「挑戦と創造」を理念とし,中堅企業への成長という目標を持っておられるということがわかりました。そこで最後の質問ですが,社長さんが掲げるチャレンジスピリッツとか「挑戦と創造」という企業マインドを,会社の構成員全体に普及ないしは浸透させてゆくような取り組みはされているのでしょうか。

高橋:それは難しいのですが,色々な方法でやっています。私が,直接にそれを語るのは月1回の朝礼とか,後は定例会議のなかです。また外部から経営コンサルタントを招いて,中堅クラスの人の意識改革をはかっています。ここ数年では,平均3334歳で,ちょうど課長になるかちょっと前の人たちを10人ほど集めて,コンサルタントの先生と一緒になってグループ討議をしました。その時にやったことはそんなに特殊なことではなくて,5年後の協立製作所をどのようにしたいかという質問を投げかけて考えさせる。その考えを3つのグループに分けて議論し私に発表する。その発表に対して私が逆に質問する。その後,彼らが社長の私に対して質問状を提出し,それに対して答えるということをやっています。そうした試みを3年間やって,私の息子とともに数人成長した人が出てきました。

質問者:近年,後継者不足が度々指摘されますが,それは楽しみですね。本日はどうもありがとうございました。

(終わり)

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