茨城におけるものづくり企業経営史(1)

20135月、筑波大学人文社会系 平沢照雄教授から連絡を頂き、「茨城におけるものつくり企業経営」の研究の一環としてゼミの学生5名と会社訪問と工場見学の申し入れがあり、そのインタビューを平澤研究室で筑波大学『経済学論集』第66号(20143月)に発表されたので、本日公表する。 

表題

 オーラルヒストリー

   茨城におけるものづくり企業経営史

           ―協立製作所・高橋日出男社長に聞く―

1

はじめに

 本稿は,茨城におけるものづくり企業の史的展開を明らかにする作業の一環として,協立製作所社長高橋日出男氏に,創業から今日に至る同社の企業経営について聞き取り調査を行った記録である2)。

 ここで同社の概要を示すと表1のようになる。同社は油圧機器部品の専門

1 協立製作所・会社概要

設立       19582月(創業者:高橋庫吉)

資本金    9,400万円

従業員    273名(正社員:248名、パート他:25名)

事業内容              精密加工による油圧機器部品の製造

本社           東京都品川区東中延1丁目

茨城工場              茨城県筑西市三郷1239

関係会社              協立熱処理工業()(同上)

上海協立機械(中国上海市松江工業区)

        (資料)1会社提供資料より作成。

     (注)  従業員数:201341日現在。茨城工場および協立熱処理工業の

         合計

1         筑波大学人文社会系教授

2         高橋日出男氏略歴

1950年に創業者高橋庫吉の長男として生まれる。1972年日本大学理工学部精密機械工学

科卒業後、19743月協立製作所に入社。19939月同社社長に就任し、現在に至る。

                                平

メーカーとして,油圧機器の精密部品製造をはじめとし,油圧のピストンポンプやバルブのアッセンブルを主な事業として発展してきた。なかでも建設機械の分野において,油圧ショベル用コントロールバルブの主要コンポーネントであるスプールで世界シェアの約4割を占めるに至っている。

また表2の沿革に明らかなように,同社は、日本経済が高度成長を開始した時期に東京品川の地において製造を始め,高度成長末期にさらなる成長を期して茨城に進出した中小企業であった。茨城におけるものづくり企業に関しては,県北部の日立地区に集積する中小企業がその代表事例として取り上げられるこことが多い。これに対して協立製作所は,そうした産業集積地である日立以外の地域への進出を企図したこと,また進出当初から特定企業の下請けにとどまらず自立経営を指向した点で注目される事例である。

同社は茨城進出直後に石油危機に直面するが,1970年代末以降に取引企業を拡大する形でそれを乗り越える。さらにバブル崩壊と前後する形で中国(上海)に進出するとともに,日本国内においては部品製造にとどまらずアッセンブル製品も積極的に手がけつつ取引相手をいっそう拡大することで,「失われた10年」と言われる時代にも成長を続けてきたものづくり企業として注目することができる。なおこうした発展により,同社は2008年に経済産業省「元気なモノ作り中小企業300社」にも選ばれるに至っている。

 およそ以上の展開を踏まえ,本調査では,主に以下の3点を中心に聞き取りを行った。(1)同社の経営にとって大きな画期となった2つの地域展開-①東京から茨城への進出,②中国上海への進出が,どのような意図あるいは経緯で行われたのか。(270年代の石油ショックをはじめとして90年代初頭のバブル崩壊さらには2008年のリーマンショックに至る外部環境の激変に直面しながら,それをどのように乗り切ってきたのか。(3)ものづくり企業として持続的な成長を実現するにあたり,同社の企業理念や経営目標さらには社長の経営思想がどのような役割を果たしてきたのか,という点である。

茨城におけるものづくり企業経営史           

表2 協立製作所・沿革

1954   11       切削工具の研削・製造開始

1958   2      東京都品川区に有限会社協立製作所を設立

1965   5      油圧部品の研削・製造開始

                            カヤバ工業()(現KYB)と取引開始

1971   8      茨城県真壁郡協和町(現 筑西市)に茨城工場を開設

1979   5      油研工業()と取引開始

               9      ()不二越と取引開始

1980   7      日立建機()と取引開始

1991   6      上海協立機械部件有限公司を設立

                            川崎重工業()と取引開始

1992   9      ()小松製作所(現コマツ)と取引開始

1993   11       (茨城工場)スプール専用工場完成

1996   10      組立工場完成、バルブAssy製品納入開始

1997   9      (茨城工場) 熱処理工場完成

2000   11       ISO9001認証取得

2001   7      東芝機械()(現ハイエストコーポレーション)と取引開始

              10      キャタピラー三菱()(現キャタピラージャパン)と取引開始

2004   4      (茨城)新工場完成、FMS導入、三菱重工業()と取引開始

               4      ハイエストコーポレーションへポンプAssy製品納入開始

2005   12      コマツへポンプAssy製品納入開始、ISO90012000年版)更新

2006   2      協立熱処理工業()設立

2007   9      (茨城)新工場増設(K6工場)

2008   1      資本金9,400万円に増資

               2      ISO14001認証取得

               4      経済産業省「元気なモノ作り中小企業300社」に選ばれる

               6      コマツへフォークリフト用新バルブAssy製品納入開始

2009   5      東京工場を茨城工場へ統合

               7      日立建機へパワー・ショベル(PS)用レギュレータバルブ納入開始

              12      ISO140012004年版)更新

2010   2      ISO90012008年版)移行・更新

2011   7      「いばらき産業大賞」(茨城県知事表彰)を受賞

               8      パワー・ショベル用メインスプール増産設備(20,000/月)導入

              11       ISO90012008年版)更新

(資料) 会社提供資料より作成。

 なお調査は,201364日に協立製作所茨城工場(茨城県筑西市)におい

て実施された。調査実施にあたっては、高橋社長とともに同社総務部長飯塚勝

夫氏に大変お世話になった。記して感謝の意を表する次第である。当日の聞き手は平沢照雄および筑波大学社会学類平沢ゼミナール学生(市瀬,北浦,津留,長門,浜野)である(以下,本文では一括して質問者と表記する。また本文中の( )内は,特に断りのない限り平沢が補足したものである)。

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